八坂神社稲荷神社例大祭一戸まつり2022

鬼神のごとき巴の御前 薙刀かざす勇ましさ(岩手県一戸町八坂神社祭典山車「橋中組」音頭)




 祭典初日、橋中組の山車が一番初めに街路に出て、新調の大八車を鳴らして駅に向かった。きしむその音はほんとうに大きくて、今までのいろんなものを破っていくように聞こえて涙が出た。

 



朝比奈三郎義秀 / 静御前二枚扇  上 町 組

山車の作り方自体が大きいのだと、この題で強く実感出来た

怪力無双の 朝比奈三郎 敵に情けも 武士の道
鎌倉武士の 誉れも高く 怪力朝比奈 幾代迄

※南部流風流山車の『朝比奈三郎』





見返しは2回目の登場となる白拍子静御前小屋入り18時は各組厳守

(題紹介)鎌倉幕府を乗っ取ろうと暗躍する北条に敢然と立ち向かった和田一族の武者達、中には御所の惣門を独力で破る強者もいた。

 私が実見出来た中では1位か2位くらいの朝比奈。絵紙(広告・チラシは昭和の国広画伯、実際の絵紙は平成の香代子画伯)の表現を具に写してすべての動作を自然に仕上げ、色味はすっきりと派手・特にも鉢巻の金具をきちんと作ったのが良い。
 コロナ禍の暗鬱を打ち破るような明朗快活な山車であった。ただ静御前は、前回のほうが物語が在った気がする。









仁田四郎忠常 / 御狩の万寿(源頼家) 本  組

3年越しの構想で、「鎌倉殿〜」は「それに追いついたのだ」という

疫病退散 八坂の加護で 守る一戸 牛頭天王
ししを仕留めて 御狩りの勲 富士野は誉れの 晴れ舞台

※南部流風流山車の『仁田四郎忠常』 くずまき秋祭り


富士の御狩りに武勇の鑑 にたん忠常しし退治(岩手県一戸町八坂神社祭典山車「本組」音頭)hspace=30実物とはだいぶ違うが、こっちも大迫力。定型にはこちらが近いhspace=30

(題紹介)古参の鎌倉武士が富士の巻狩りで大猪を仕留め、「鎌倉殿」頼朝を守る物語。巻狩りは頼朝嫡子「万寿(源頼家)」の披露目の機会でもあった。

 抑えた色味でここまでの迫力はすごい。装束の独自性・再現度も見事だが、眼目の猪が従来のどの表現にも似ず、大きさ・異様さを十分に放った(だからこそ、夜の見え方が非常に気になる)。短刀は振り上げるのでなく突き立てる動作にし、それを細やかなねじれによって躍動的に演出した。なお昨年一昨年と町内を沸かせた模型にも、今年は仁田四郎の躍動的な趣向が上がった。
 見返しは今シーズン一・二を争う唸ったひとつ、構想の面白さにきちんと構図が追いつき真に迫る狩場の着付け、添えられた紅葉の具合まで素晴らしい。









巴御前 / 木曾義高 橋中組

駅前一番乗り、盆上で堂々と・活き活きと「動いて」いる

木曾の野山に 義仲追いし 胸に秘めたる 恋ごころ
(見返し)大姫願う 源氏の絆 義高ともに 幻と

※南部流風流山車の『巴御前』 くずまき秋祭り

 

なぜか、初日は薙刀無し・徒手空拳のこの姿が目立ったhspace=30岩手県一戸町八坂神社稲荷神社祭典山車


(題紹介)木曾義仲に従った天下無双の女武者、馬上で薙刀を振るう雄姿。見返しには義仲の子「冠者殿」の非業の最期を、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」から採った鞠(まり)の逸話で。

 男人形を塗り直して女武者に仕立ててある。動作に特有の軽やかさがあり、色遣いにも品がある。とはいえ、やはり長髪ではあってほしいと感じた。
 見返しにも唸った。配色を絞り、目を引く手元の鞠に意図を込めたのが凄い。町内他組の従来の在り方に似ていて、それを昇華したように思える。









石橋 / 恵比寿 西法寺組

前作(平成25年)と親子の人形が逆になり、他にもいろいろ変わっている

見るも艶やか 牡丹の園に 踊り狂いし 獅子の精

※南部流風流山車の『石橋』

 

夜景が映えそうだ、あと2時間待って見たかった唯一、笛吹に歌舞伎風の長いマスクを付けた。美しい祭礼行列である


(題紹介)「連獅子」と似ているが、こちらは中国風の装いで舞台は天台山。白毛の親獅子と赤毛の子獅子が「花の王」たる牡丹に戯れる舞姿。

 矢の根・巌流島・象引・義経千本桜・真田幸村・押戻し・暫…を経ての再登場、動き出すと大迫力。思ったよりは前回と似ず、江戸歌舞伎というよりはロック・パンクな傾奇(カブキ)山車。その点では、赤が内向きなのが奏功。







四ツ車大八 / 金太郎 野 田 組

義理と人情を両手に込めて 高くかざすや四ツ車(岩手県一戸町八坂神社祭典山車「野田組」音頭)

その名大八 花四ツ車 神明弥生の 町土俵
(見返し)野山で紡いだ 熊との絆 鉞担いで 金太郎

※南部流風流山車の『四ツ車大八』

強さとやさしさ内に秘めて 熊にまたがる金太郎(岩手県一戸町八坂神社祭典山車「野田組」音頭)

(題紹介)力士と鳶の命がけの「町土俵」。大八が荷車ごと差し上げる奇観は野田組が創作し、いまや盛岡山車広域に学ばれるに至った。

 喧嘩の雰囲気・相手が舞台の外に居る感じが従来に無く出たと思うし、車の大きさも際立った。顔は、あえて見づらく車輪の陰から覗く様にしたのかもしれない。
 見返しは熊が置き物に見えたのが残念だが、山車の枠内の可愛らしさ・親しみやすさではあった。なお背景は足柄山でなく、世界遺産の御所野の森。







(補足)コロナ禍のもとでの令和4年一戸まつりは、夜間運行が無くなった他はほぼ従来通りに催行、絵紙配りも門付けもした。ただし引き子のマスク着用・手指消毒は徹底され、午後6時には各組きっちり小屋入り・その後しばらく電飾したまま山車小屋を開けた。

※各組歴代作例
※令和4年総括


写真・文責:山屋賢一(やまや けんいち)/連絡先:sutekinaomaturi@outlook.com
岩手県二戸郡一戸町 令和4年8月26日(金)

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