岩手県葛巻町 くずまき秋祭り
全体的に見て、花がたくさんついて横に膨らんだ、量感あふれる山車です。松は一本ものを使って山車の四隅を隈なく覆い、桜と紅葉をものすごくたくさん吊るします。造花の種類は少ないですが、数(量)が多く、作りも丁寧に見えます。白黒写真に写すとシダレ桜と同じくらい存在感の出る大ぶりの藤の花、葛巻独特の山車飾りである平面的な山吹の花。台車幅が広いので、見返しのみならず表にも酒樽を飾っている組もあります。借り上げ山車祭りの中でも、このように地元山車組が一生懸命手を入れて独自性を生んでいるのは珍しい例だと思います。 山車を中心としたお祭りの流れ 午前中は町内をかなり広域にわたって門付けして回り、山車の絵が描いてある手ぬぐいを祝儀札として一軒一軒配って回るようでした。 お通りが終わると、それぞれの山車が音頭上げをしながら祝儀のお礼に回ります。1日目は踊りの競演や電飾した山車の展示など合同イベントが中心、山車組のメンバー始め町民総出の流し踊り大会が繰り広げられ、山車はライトアップしたままお祭り広場など適当なスペースに止められます。観客は踊りを眺めたり、電飾を施した美しい展示山車を眺めたりしながら、秋の夜長のひと時を満喫します。2日目は各山車ともかなりみっちり門付けをします。ほぼ50メートルおきに音頭と踊りをセットで披露、門付け場所も4つの組で大差無いので(主に葛巻病院周辺)、夕方から夜にかけてゆっくり山車を楽しめます。単に音頭をあげるだけでなく、その時々の流行りの歌謡曲に乗せて手踊りや余興を披露するのが葛巻山車の一番の特徴で、観客もすごく楽しみにしています。音頭を上げる人、太鼓をたたく人、踊り子…ときちんと役割が分担されています。 山車の作法 小学生はもっぱら手踊りを分担され、太鼓は中学生がたたくことになっています。中学生が叩く小太鼓は腕がきちんと上がっていて、あまり拍子が乱れません。さんさ踊りに使うような大きさの締め太鼓をたたきます。お囃子のペースはかなり緩く、岩手町川口のペースに近いものがあります。のどかなお囃子にカチ、カチと拍子木が入ると、歩み太鼓が止まります。一戸と同じような止まり方です。その後音頭をあげますが、イントネーションの狂いが若干あるものの、ほぼ盛岡と同じ節回しです。道路事情の関係もあり、運行中に歩み太鼓と平行して音頭上げをする場面などは葛巻ならではです。盛岡のような停止拍子があるのかどうか確認してみると、お通り前に役場で待機しているとき、また流し踊りの夜間展示のときに、2つ、3つ、4つときちんとマッチャをそろえて叩いていました。笛のメロディーは独特で、あまり印象に残らないような優雅なメロディーが多く、4つの組でおのおの違うようでした。 山車のほかには… 勇壮な葛巻神楽が初日午後5時過ぎから『権現舞』・『三宝荒神』・『剣舞』・『盆舞』・『鳥舞』など伝承されている全演目を披露します。動きが大きく、中学高校と学ばれているだけあって若手の活躍が目覚しい神楽です。お通りとその帰り、また門付けの形で辻辻で披露されている七つ物とさんさ踊りは、動きそのものはアッサリしていますが、大変迫力のあるお囃子です。装束もおのおの独特で、「おっ」と立ち止まってしまう外観でした。 最後に 山車のまわりは常に車でいっぱいであり、山車は道路の片側にぎっちり寄って動くため、左右から見ようと思うとちょっと厳しいかもしれません。町の方々の邪魔にならないようなお祭り見物を心がけたいものです。 
お通りは両日とも午後1時半過ぎからで、バイパスを運行するので交通規制が出来ず、郷土芸能3団体を連れた神輿が通ってしまった後、きちんと交通整理をして山車が続きます。お通りが途中で切れてしまうのです。郷土芸能、山車とも祭典実行委員会に寄稿したコメントがお通りの際に読み上げられ、観光用パレードのように仕上がっています。
(平成14・16・17・18年見物)
(各山車組について)
借り上げ先は一戸町の上町組で、通常はその年の人形を借りますが、宮祭りの翌年に前年の人形を借りたこともありました。背景を描き加えたり大道具を作り直したりして、葛巻ならではのものに仕上げています。音頭にも自前で読んだ歌詞を加え、上町組の絵紙に車が描かれていないときでも、茶屋場組の手拭にはきちんと台車が描き加えられています。2通りの染め方の桜を併用し、枝垂れではなく上に向いた枝で飾ります。台車は廃トラックです。夜間照明には白色電球を使用しています。
【新町組】
葛巻山車の師匠格といわれている組です。遅くとも昭和61年には一戸町の本組から借り上げを行っており、必ずその年の人形を借りますが、衣装を変えたり組み方を変えたりして葛巻ならではの作品に作り変えます。頭を交換した年もあるようです。近年は地元史に基づく一戸での演題を改め、全国区の歴史物語に置き換えて別な題をつけています。音頭や解説文も自前のものを作っているようです。色の赤さが印象的な枝垂れ桜と紫白2色の藤が特徴で、台車は大八車ですが軒花が無く、滝のみを下げています。演題立て札のほかに、「奉納新町組」と書いた立て札を山車に立てます。
【浦子内組】
借り上げ先は一戸町の橋中組で、昭和41年以来一貫しています。必ずその年の人形を借ります。台車は奥行きのある廃トラックで、立ち岩のほかに両側面に岩盤2枚を飾り、この上に牡丹をアーチ状に飾ります。橋中組では点いたままの牡丹を、浦子内組では点滅させます。人形が松の上に上がらないように組み、松には裸電球をたくさん吊るします。桜は縁を染めた小さめの花をすごく長いシダレに仕立て、観客の頭をすっぽり掠めてしまうほどたくさん束ねて山車の後ろに垂らします。紅葉もたくさん使い、ともに付け根を一本の木のようにまとめています。2種類の進行囃子のうち、ゆっくりとしたペースのものは八戸三社大祭の笛のメロディー、リズムの早い囃子は盛岡の正調メロディーをそれぞれ使っています。

借り上げ先は盛岡市の盛岡観光協会で、遅くとも昭和59年以降一貫していますが、「矢の根」「五條大橋」など三番組の人形を借り上げた年もありました。名作と評判が高くほとんど他地域に貸し出されなかった「連獅子」も、下町組にだけは貸し出されています。通常その年の人形を借りますが、宮祭りの翌年は前年の人形を選ぶこともあります。表裏の組み合わせが変わる年もあります。盛岡で両側に桜をつけていた時期も、一貫して片側に紅葉、もう一方に桜という配置にこだわり、2色めの桜は定型飾りというよりは小道具の一部として(たとえば「花咲爺」の桜など)使っています。台車は大八車で、軒花がなく滝のみを下げ、大太鼓には注連縄を張っています。

【祭 典 日 程】
9月第4週末、秋分の日周辺の土日に設定されることが多い。
山車の運行は両日とも午前9時から夜7時ころまで。
1日目は電飾した山車を街路に飾り、流し踊りをする。
合同運行(神輿渡御)は両日とも午後1時半から。
【ア ク セ ス】
いわて銀河鉄道「いわて沼宮内駅」のバス乗り場にて「久慈方面行きしらかば号」に乗車、「葛巻駅前」で下車
(盛岡駅から直通でも可 運賃は片道1800円程度)
文責・写真:山屋 賢一
参照:「山車浦子内組25年のあゆみ」(山車浦子内組山吹会 平成元年)・「広報くずまき」
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