沼宮内稲荷神社例大祭岩手町秋まつり2018
※南部流風流山車の『鬼若丸』 ※当組見返し鬼若丸の前作例−平成19年− 久々にこの組の本気を感じた。妥協点はほぼ無く、雄大に、細部まで工夫して作ってある。 ※南部流風流山車の『牛若丸』−含 当組前作(平成19年見返し)− これまでの類型にまったくはまらない新趣向、国芳の武者絵が国芳らしく立体化している。 ※当組前作−平成18年− ※当組前作(見返し)−平成22年− ※当組前作(見返し)−平成25年− 見る側の視点をさまざまに移動させながら、最も見せたい部分に視線を凝集させる山車であった。その最たる例が、武者を大胆にかがめて顔を隠し、襲ってくる夜叉の気迫を「飛んできたように」見せた点だろう。 ※南部流風流山車の『助六』−含−昭和61年当組同趣向
※南部流風流山車の『児雷也』−見返し関連題− 一般に「元禄見得」といわれてきたこの形の勧進帳は、富樫の問いを受けて弁慶が真言(しんごん)を説く姿という。昭和の末に隣のの組が作り、以降はあまり採られずに来た。
文殊菩薩が 遣わす獅子の 牡丹にたわむる 舞姿
(見返し)奇譚鯉取り 滝棲む主と 鬼若博闘 散る飛沫
親獅子にこの頭を割り当てた意図が十二分に伝わるし、子獅子も負けていないし、
大きさ・高さは山車でなくあくまで趣向に合わせてあるし、
牡丹の向きを不規則にした効果も出ている。
以上は、実は富沢画伯の絵紙の恐ろしいほど徹底した再現であり、
ここまでやって、見返しになお派手なものを選び、個性十分に作り込んだ。
…立派である。長く語られるべき出来である。
赤く燃え立つ もみじの色よ 維茂武勲を いろどりて
美女にやつした 魔性をあばく 神のしるべの 水鏡
鬼退治の武者を貴公子でなく無骨な風合いに描いたのは昭和40年代の盛岡山車以来、ただし今回は人形に鬼に変わる前の娘を採り上げ、しかも主役の真後ろに置いた。
盃に鬼女の本性を映し、酔いが一気に醒めた武者の身構えを、手が交差した複雑な形にしている。
山車人形の枠を超え、こうした表現物は非常に珍しく、価値が高い。
背後の紅葉も足元の水面に浮かぶ一葉も、素晴らしい配置である。
絵解きのような構想を観衆のどれだけが受け止め、楽しみ得るかが気になる。
朱雀大路の 羅生の門に 綱と夜叉との 大舞台
(見返し)橋に牛若 夜露の五條 笛を慕いし 秋の月
むろんその根底には、鬼が兜を掴み、その腕を武者が掴み…という場面描写の徹底があり、そこにこだわったがゆえに従来に無い景を演出できた。
見返しもあっと言わせる体勢で、左右いずれにも見所を産む構想である。
男じまんの 助六傘よ 華に賑わう 仲之町
(見返し)黄金まといて 飛沫に濡れる 映える清水に 滝登り
新町組の助六といえば、沼宮内でなく岩手全域を代表する秀作である。だからまず、助六をやろうとしたこと自体が素晴らしい。
その上で、高さを要する趣向に大人形を充てたのはなぜだろうと思う。ぼんやりとだが、全体に玄人感が漂わないのはなぜかと思う。
見返しは、隣が人付で出しているにもかかわらず「良い鯉だ」と思えた。鯉自体の出来と、酒樽に絡む波・長く伸びた飛沫が良いのだろう。
歌舞伎十八番の 勧進帳を 飾り引き出す 愛宕山車
関守富樫の 問答やまず 真言かたりて 見得を切る
人形の姿勢としてこの型の魅力に迫れたかどうか疑義はあるものの、とりあえずは珍しい構図・見たことの無い弁慶の山車に出会えて嬉しい。顔自体は端正で、迫力もある。絵紙は今回初めて入手できたが、品のある良い絵柄であった。
児雷也と対の綱手が見返しに単体で使われたのも珍しく、ナメクジを下でなく横に展開した構図はなかなかである。
写真・文責:山屋賢一(やまや けんいち)/連絡先:sutekinaomaturi@outlook.com
岩手県岩手郡岩手町沼宮内 平成30年10月4日(木)・同6日(土)
/同紫波郡紫波町彦部 同9月17日(月)・同花巻市東和町土沢 同9月16日(日)・秋田県仙北市角館 同9月7日(金)
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