志賀理和気神社祭典山車2023


 令和5年の日詰まつり夜間パレードの様子。
 出発は夜7時だが、行列はゆっくり進み山車が商店街の通りに入りきったのは8時近かった。先頭は上組、雨の五郎の番傘は松の下にきっちり収まり、その松いっぱいに散らされた豆電球が満天の星空のごとき景観を呈す。黒繻子の着物は暖色の灯りをよく受け止め、視野全体がまばゆい。マイクが複数の子供の声を束ねていて、あぁ、やはりこの町のマツリは制限開催ではダメで、この元気で幸せそうな子供たちの声あってこそだとつくづく思う。見返しに現れたさんさ踊りも灯り・華やぎをそのまま纏い、組の名物・三位一体の大太鼓が見事な奏法でその前に躍動した。/続く下組の人形は上組と同じくらいの大きさだが、大胆に上に突き出ていて山車全体が大きく見える。既にここで南部流山車の表現の豊かさに心打たれ、見返しに現れた日本銀次の絞った色味も粋に見える。電飾も山車も上組より地味だ、地味だからこそ格好良い。/しばらく止まったままの見返しを、大太鼓の躍動とともに遠望する。良き時間である。続いて進んできた一番組の山車は明らかに人形が大きく、しかも全体が青い光の流れに彩られている。夜祭り日詰の面目・見所すべてが凝集するそこに溢れていたのは、どこまでも「山車の楽しさ」であった。/最後尾の橋本組が2体もの・題材として一番手の込んだ組武者の山車であるのがちょうどよく、結果としてこの順に山車を見せたパレードそのものの質を例年以上に感じたのである。
 日詰の、南部流の山車の楽しさとはコレだ!と、例えば初めて本県の山車を見る方を誘って、見せてあげたい。

 



早川鮎之介 / 南面の桜  一番組

日詰まつり志賀理和気神社祭典山車(岩手県紫波郡紫波町日詰)令和5年9月

戸板ひとつで 流れをとどむ ちから勇者ぞ 鮎之介
(見返し)我は去るとも 思いは残す みなみおもての この花に

※南部流風流山車の『早川鮎之介』
南面の桜@南面の桜A:双方わかりやすい写真ではないです…



日詰まつり志賀理和気神社祭典山車(岩手県紫波郡紫波町日詰)令和5年9月日詰まつり志賀理和気神社祭典山車(岩手県紫波郡紫波町日詰)令和5年9月








和藤内 / 日本銀次 下 組

日詰まつり志賀理和気神社祭典山車(岩手県紫波郡紫波町日詰)令和5年9月

姉が覚悟の 血潮の流れ 忠義を託す 紅流し
武勇輝く 流れに灯 心湧き立つ 水の色

※貸出元
※南部流風流山車の『日本銀次』


日詰まつり志賀理和気神社祭典山車(岩手県紫波郡紫波町日詰)令和5年9月日詰まつり志賀理和気神社祭典山車(岩手県紫波郡紫波町日詰)令和5年9月








雨の五郎 / かじ町さんさ 上 組

日詰まつり志賀理和気神社祭典山車(岩手県紫波郡紫波町日詰)令和5年9月

八重に九重 十八番の歌舞伎 花の姿絵 当たり芸
(見返し)牡丹花笠 五色を腰に 踊る姐子の 艶やかさ

※南部流風流山車の『雨の五郎』
平成20年上組平成24年上組


日詰まつり志賀理和気神社祭典山車(岩手県紫波郡紫波町日詰)令和5年9月日詰まつり志賀理和気神社祭典山車(岩手県紫波郡紫波町日詰)令和5年9月








川中島の戦い / 鯉の滝登り 橋本組

日詰まつり志賀理和気神社祭典山車(岩手県紫波郡紫波町日詰)令和5年9月日詰まつり志賀理和気神社祭典山車(岩手県紫波郡紫波町日詰)令和5年9月

馬上謙信 大太刀振るい たじろぐ信玄 幕のうち
獅子虎挑みて 川中島に 戦激しく 雲を呼ぶ

※南部流風流山車の『川中島の戦い』
※令和元年志賀理和気神社祭典山車 橋本組




 出店の暖簾の奥に見える町の本来の明かりがだいぶ乏しくなったと思って、ふと気づく。そうだ私はこの町に、あまりにも足を踏み入れていなかった…。

(所 感)

【一番組】描かれた分の水は非常に上手く、また遠望時には圧巻の見栄えであった。体にかかる部分の水をすべてリレー式の照明としたのも面白い試みではある。/ただ立体の水・つまり飛沫の配置が寂しく、体にかかる水の描写も昼間は味気なく、また背面からの水の勢いを受けている感があまり感じられない体勢であった。流れ全部が電飾であるのは華やかな反面、眼がチカチカして見づらい。見返しは、「桜」が主役であるなら枝を集めただけでは十分でなく、舞台全体がもう少し高い位置にあるべきと感じた。
【下 組】一番長く見ていた気がする。一戸では飾り方が非常に重要だったので、その再現いかんが日詰での見栄えのカギであった。結果的には十分達成、神社前に並んだ姿もひときわ華やかで、背の高い山車に見えた。高張提灯の位置にも気遣いがある。見返しの纏の車紋が表に少し見えるが、これが北京の月に見えるようだったら一層良かった。/写真3枚目は神社前の幟立てで、鉄筋の支えは初めて見たので載せた。
【上 組】組み上げ時、人形部分の高さがだいぶ抑えられていて心配だったが、出来上がりにさほど違和感は無く、顔も味があり、桜なども丁寧に見られる飾り方であった。見返しは鍛冶町さんさ踊りの礼・手拭い踊りで、背景などここまでの蓄積が上手く活きた形。/とはいえ、大人形仕立て・濃い顔の五郎も見たかった気はする。手紙の中身は、読んで耐えうる形であってほしかった。
【橋本組】前回の焼き直しは前代未聞で、これは風流山車という定義自体を侵食しているから、あまり色々と考えられずただただ不快であった(申し訳ないが、この感覚は動かせない)。見返しには背景・演出にだいぶ変更が入り、紅葉の効果がよく出た反面、眼目の登った感はほぼ消えた。信玄の構えのみ、前回より強そうな感じはした。




※各組歴代作例


写真・文責:山屋賢一(やまや けんいち)/連絡先:sutekinaomaturi@outlook.com
岩手県紫波郡紫波町日詰 令和5年9月1日(金)・同2日(土)・同3日(日)

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