碁盤忠信
歌舞伎そのものではすでに廃曲に近い状況だが、山車の演題としては盛岡広域のみならず、以前は青森方面(ねぶたや八戸の山車)にも碁盤忠信の取材が見られた。古くは古浄瑠璃に登場する逸話であり、戦前は無声映画に作られてもいる。山車行事は一年に一度のハレの機会であり、ケの日常ではすでに忘れられてしまったものでもハレの限られた期間には持続されていることが多い。現在でこそ祭りは古式に立ち返って行われるが、このことで祭りの期間にのみ何十年も前の習俗が伝承を続ける、という例も少なくないのである。碁盤忠信の伝承も、このような観点から理解されることではないだろうか。
南部流風流山車の演題の中には、暫や鏡獅子のように著名な歌舞伎演目に取材したものもあるが、一般にあまり知られない、上演機会もない、忘れられた演目を作ったものもある。『碁盤忠信(ごばんただのぶ)』はその代表例であるが、これは盛岡広域で作られる歌舞伎演題の定番中の定番といえるものである。


地元平泉出身の英雄として、また碁盤を振り上げるという構図のわかりやすさからも、北東北の山車演題の首座に碁盤忠信が上がってきたのではないかと思われる。
文責・写真 : 山屋 賢一
(昭和43年盛岡八幡町い組写真:熊谷聖悟氏提供)
(音頭 名句撰)
碁盤構えて 北条方の 寄せ手蹴散らす 歌舞伎見得
夜半に太刀風 碁盤に受けて 残る武勇は 神の恩
碁盤片手に 寄せ来る敵を 討ちて誉れを 後の世に
碁盤振り上げ 討ち手を寄せぬ ますら雄鹿の 勇ましさ
碁盤忠信 荒事活かす 仁王襷に 火焔隈
義経が御佩刀 着長賜けて 吉野に咲かす 義士の花
【他地域】 ★青森県青森市