盛岡八幡宮例大祭2018

 なんだかんだで、昔ながらの良さが一番と感じた今年。

 



暫 / 棒しばり 紺屋町 よ組

見得はしばらく襷は仁王 髪は五本の車鬢

七尺有余の 大太刀佩いて 筋隈取の 顔の紅(べに)
(見返し)棒は鹿島(かしま)の 使い手次郎 縛られ踊る 能舞台

※南部流風流山車の『暫』

※同構図最近作(沼宮内大町組 平成28年)

 
酌むや盃しばられ交わす 舞台の舞の心地よさ江戸の霜月顔見世芝居 悪公家懲らす鶴が岡

 当組伝統のこの構図を、3度のうち最も大ぶりに表現した。顔のきつさが良く、飾り方も古風・簡潔で「50年前に出ていても違和感が無い」。それが以下のどの趣向にも勝る、この山車ならではの魅力だ。
 見返しは不自然に大柄だが、それが不一致でなく奢って見えるので良い。






先代萩 / 浦島太郎 盛岡観光協会

裃姿で化身の甲斐に かざす鉄扇 男(だん)之助

鉄扇構えて 額(ひたい)に一打(いちだ) 妖術解けて 残る疵(きず)
(見返し)亀にまたがり 龍宮城へ 月日経つのも 夢のうち

※南部流風流山車の『松前鉄之助』

 
波路はるかに思いを残し 夢かうつつか玉手箱不義にくみせし化身の甲斐も 正義の勢(せい)に見破られ

 盛岡地方では長らく『松前鉄之助』の題で出されてきた趣向だが、本作は歌舞伎の役名に合わせ、舞台同様赤肌に隈を取った。音頭では字数の関係か「ダンの助」と歌われている。
 従来に無いほど豪勢な鉄之助であり、ねずみも大きく、豪華な着付けの役者に負けていない。見返しは富沢番付そのままの非常に端正な仕上がりだが、表裏に動物でくどい印象になったのが惜しまれる。
 立体的で日本画調の優美な盆波が印象的であった。






義経千本桜「大物浦」 / 吉野山 静 青山組

怨みの思いをその薙刀に 御坊弁慶さとす数珠

闇夜の奇襲も 松明消えて 平家最後の 夢が散る
(見返し)吉野白雪 消えゆく九郎 あとぞ恋しき 白拍子

※南部流風流山車の『船弁慶』

※参考作品比較:表(平成24年石鳥谷まつり)

※参考作品比較:見返し(平成27年石鳥谷まつり)

 
桜花爛漫吉野の山に 初音鼓でとよもせる夢も栄華も水底深く さだめ悲しき出会い哉

 平家の恨みを捨てきれない中納言知盛と、情けと救いの数珠を掲げる武蔵坊弁慶。石鳥谷の上若連が数年前に案出した題材で、見返しにも同組の影響が見られる(上掲参照)。ただ、前作例より知盛の敗れた印象が強調された。
 河北型自作山車特有の色合いがあり、近年の鋭く端正な上がり方とは違う「素朴さ」「味」「彩」がむしろ懐かしく、魅力的に映った。酒樽の一番下をベアレンにしたのも面白い。






景 清 / 鯉金時 城西組

剛勇無双の景清無念 世俗を遮る角格子

柱を抱えて 不動の見得は かげきよ怒りの 牢破り
(見返し)足柄山の 怪力勇者(ゆうじゃ) 腹かけ姿 金太郎

※南部流風流山車の『景清』-含-同組平成10年の前作、平成16年の日詰貸出時

※南部流風流山車の『坂田怪童丸』

 
成田屋受け継ぐ荒事芸は 初演景清牢やぶり大鯉かざして怪力自慢 強健名高き怪童丸

 人形がぐっと前に出て、牢の目茶苦茶な壊れ具合を具体的に・非常に派手に見せた迫力の一台。他より一回り大きな山車に見えた。
 むしろ歌舞伎に仕立てず物語としての景清にすれば、後世語られる異色作となったやも。金太郎は隈無しか、逆に手足にも入れるのが妥当。






里見八犬伝 / の組火消し 八幡宮北鳥居 の組

芳流閣の瓦の上で 信乃と現八めぐり合い

親の形見と 犬塚信乃が かざす村雨 陽が映る
信乃を追い込み 犬飼現八 組み合い縺れ 利根川に

※南部流風流山車の『里見八犬伝』

※同構図先行作(沼宮内の組 平成25年)

 
岩手県盛岡市盛岡八幡宮祭典山車3年目の江戸の組の纏、番屋の櫓とともに

 屋根の切り取り方に新発想を入れた意欲作で、大きな鯱鉾を畳まずに常に見せることができた。バチンと音がしそうなほど、切り結びの迫力がある。
 屋根上の人物の手の位置が変われば、双方の顔がよく見えた可能性が高い。






畠山重忠 / 千代の御神楽 本宮 な組

鹿もたじろぐ切り立つ崖を 馬を肩にし降りんとす

秩父の若武者 重忠勇姿 源氏の先陣 一の谷
武勇無双の 重忠公が 鵯越の 逆落とし

※南部流風流山車の『畠山重忠』 -含 同組昭和59年の本題-

 
地元に伝わる大宮神楽 城下祭りに花を添え岩手県盛岡市盛岡八幡宮祭典山車

 電飾は9台中最も良かった。
 馬を担ぐような豪傑にしては優男・痩せ武者に過ぎるのと、パステルカラーで勇みを削いだのが残念。せめてどちらか片方の手は、馬に触れていてほしい。
 見返しの意外な体勢に驚き、神楽幕を立体の組み合わせて作っているのに唸った。






鏡獅子 / 胡蝶の精 八幡町 い組

岩手県盛岡市盛岡八幡宮祭典山車

舞うは弥生か 手にした獅子か 蝶に戯れ 狂い舞い
(見返し)獅子の想いを ひらりと交わす からわの髷の 稚児の蝶

※南部流風流山車の『鏡獅子』-含 同組昭和63年の本題-

 
花の香りか情けの露か 胸に鞨鼓の音になく

 例年通りの安定した仕上がり、遠望時にキリッと見える袖口の使い方である。見返しに従来は桜の絵を掲げていたが、本作では省き、竹を飾った。



(参考)同題材 滝沢山車まつりの『鏡獅子』(滝沢市巣子 平成30年)

獅子の頭に移りし弥生 歌舞伎踊りの鏡獅子

獅子にたわむれ 牡丹に遊ぶ 小姓弥生の みだれ舞

舞うは弥生か 子獅子の精か 猛る白毛の 鏡獅子









橋弁慶 / あやめ浴衣 油町 二番組

迫る笛の音月影浴びて おどる五條の荒法師

薄絹かぶり 笛吹く影は 稚児の姿や 牛若丸
月の光に 出で立つ影に 薙刀構える 武蔵坊

※南部流風流山車の『五条の大橋』

 
パレード時の牛若丸が上がった姿さみだれの庭みなもに映る 色香を競う花菖蒲

 戦後間もない時期の二番組も「躍る五条の荒法師」の名文句とともに橋弁慶の山車を引き出している。最近では平成17年の三番組以来の登場趣向であり、当時の枠を生かしつつも似て非なる味のある絵紙が出た。
 双方端正な顔立ちながら、場面として折り合っていないのが惜しい。品の良さが勝つ他方で、この題の魅力である勇み・滑稽味はほぼ完全に削がれてしまった。






暫 / 藤娘 盛山会さ組

勧善懲悪顔見世歌舞伎 邪気を祓いて福を呼ぶ

柿の素襖の 大袖張りて 襷も仁王の 蝶結び
(見返し)好いて好かれて 離れぬ仲か いとし恋しと 藤の花

※平成18年盛岡八幡宮例大祭-含 同組の本題前作例-

 
藤の花房いろ良く長く 松の緑と競い咲く

 人形部分を小さくし山車装置全体を雄大に見せる工夫だが、手・袖・紙など人形に妥協が目立ち、映えず。
 見返しは長く作った藤と顔を七重に隠す女形とで従来に無い異世界を演出(笠の趣向は平成7年の同組の踏襲)。立て札はいずれも読めないよう粋に字を崩している。



(参考)同題材・同構図(岩手町川口下町山道組 平成30年)

歌舞伎花道口上響く 成田屋元禄見得を切る

燃える隈取 正義の太刀で 痛快しばらく 颯爽と

武田家家宝の 兜を掲げ 白狐のみ加護で 諏訪湖越え






※各組歴代作例




写真・文責:山屋賢一(やまや けんいち)/連絡先:sutekinaomaturi@outlook.com

岩手県盛岡市 平成30年9月13・14・15日
/同滝沢市 同9月23日・同岩手郡岩手町川口 同9月24日

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