碁盤擲ち 追っ手を払う 独り盾無し 義を尽くす
（見返し）朧月夜を そぞろに歩く 姿みやびな 光る君
※南部流風流山車『碁盤忠信』（編集中）
栃木の那須高原に現存する「殺生石」は、九尾の狐の伝説を今に伝えている。 このほど久しぶりに表裏の音頭歌詞が複数作られ、いずれもなかなかの名文句であった。
佐藤四郎忠信は兄と対立し追われる身となった源義経の身代わりとなり、奮戦の末華々しく散った奥州平泉の武者である。兄継信とともに人気が高く、現在わが国に「佐藤」の姓が多い一因ともいわれる。裏切りに遭い夜襲された際、枕にしていた重い碁盤を片手に応戦したとの「碁盤忠信」の逸話は、盛岡地方では赤い着物の歌舞伎仕立てで山車にすることが多かった。本作では物語を活かしつつ、わらわ髪に寝巻き姿で碁盤を上げる大正以来の武者仕立てにて、この伝統題に新風を入れる。
見返しの「光源氏」は、日本古典文学の最高峰「源氏物語」の主人公である。歴代の団十郎が演じ当代市川海老蔵の舞台も好評を博していることから、山車には歌舞伎の光源氏を採り上げた
仙台藩伊達家のお家騒動を題材にした「伽羅先代萩」に登場する仁木弾正は、悪ならではの色気を見せる「国崩し」・数ある歌舞伎の敵役（かたきやく）の中でも難役・大役といわれるひとつである。
時の藩主を放蕩させた末失脚に追い込み、後釜の幼君も毒を盛って殺害しようともくろんだ弾正一派だったが、忠臣達の尽力で企みは破られ裁判にも敗れ、成敗される。敗訴した弾正が捕縛に抗い大暴れする「刃傷の場」は、白黒モノトーンの着付けに額の傷の赤い一筋が際立ち、下に鎖帷子を見せ短刀を握る弾正役の凄みが圧巻の舞台である。日詰の山車には、昭和54年・平成９年…とたびたび登場した。仙台藩の旗印「竹に雀」にちなみ、見返しには竹の中から現れた「かぐや姫」 を飾った。
玉藻の前に すがたを窶し 九尾の狐が 世を乱す
（見返し）偲ぶ面影 涙のしずく 濡らす葛の葉 うらおもて
白面金毛の九尾の狐はインドや中国で美女に化けて世を乱し、王家を次々に滅亡に追い込んだ恐るべき妖怪である。わが国には玉藻前に化身して現れ時の天皇の命を狙ったが、陰陽師に見破られ、武将三浦介の弓矢にかかって討ち取られた。その後は巨石となって毒気を放ち人々にあだをなし続けたが、高僧の祈祷によって漸く封じられたという。
見返しも狐の題材で「葛の葉」、後に本朝随一の陰陽師として名をなす安倍晴明の母、実は女に化けた白狐である。童子丸（幼い晴明）に正体を見破られ、口にくわえた筆で障子に別れの歌を残す「葛の葉の子別れ」の名場面を、従来の山車人形表現に無い斬新な工夫で見返しに仕上げた。（人形製作：一戸町橋中組）
信乃と現八 死力を尽くす 灼ける瓦の 屋根の上
（見返し）怪力坂田に 挑みし滝を 登りて鯉は 龍となる
表は江戸時代の長編小説「南総里見八犬伝」の名場面。里見家の再興を目指す八犬士の犬塚信乃は、宝刀「村雨丸」を献上しようと古賀の御所を訪れるが、策謀によって刀を偽物とすり替えられ、間者とみなされ捕まりそうになる。芳流閣の屋根の上に逃れた信乃と、捕縛を命じられた強敵犬飼現八は互角伯仲の斬り合い・組み合いを展開、勝負がつかないまま利根川へ落ちた。後に互いの「信」「孝」の珠を見せ合い数奇な宿縁を悟る、八犬士出会いの一景である。
見返しは「坂田怪童丸」俗にいう金太郎で、赤ら顔で大鯉を捕らえる姿は立身出世の象徴と尊ばれ、長じて源頼光の四天王の一人 坂田金時となった。
※本文案は、平成29年日詰まつり来場者に配った内容を、執筆者が多少の反省を含めて再掲したものです
文責・写真：山屋賢一（やまや けんいち）／連絡先：sutekinaomaturi@outlook.com
SEO
[PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送
