川口豊城稲荷神社例大祭2019
歌舞伎題材連作の4作目。武者での組人形製作歴はあるが歌舞伎の2体はこれが初めてで、見返しに女ものを作ったのも久々か、初めて。『連獅子』は昭和53年の盛岡観光協会デビュー作以来、盛岡山車の象徴とも称されてきた華やかで・難しい祝いものの歌舞伎。改元祝いにふさわしく、また同時期開催のラグビーワールドカップでもこの題をモチーフにしたキャラクターが活躍した。
源為朝は鬼でも引けないような張りの強い弓を使いこなす源氏きっての勇将でありながら武運拙く、保元の乱に敗れて島流しとなった。 歌舞伎「神明恵和合取組(かみのめぐみ わごうのとりくみ)」の主役はめ組の辰五郎で、四ツ車大八は火消らと対立するお抱え力士衆の束ね役、つまり悪役のボスである。喧嘩の前のやり取りは襟が強調された丹前姿だが、喧嘩の場面ではマワシひとつになり、相撲髷の上に鉢巻をする。喧嘩の場面は他に例が無い位たくさんの役者が舞台に上がって殺陣をするが、四ツ車は辰五郎と一対一で、ほんの短い間対峙する。その際、辰五郎の鳶口に対し、四ツ車は火消したちが屋根に上がるために持ち込んだ竹梯子を奪って、一人でこれを振り回して応戦する。
行き合う眼目(がんもく) 激しい毛振り 跳ねて乱るる 親子獅子
(見返し)初春祝いの 弥生の舞に 獅子の力が 乗り移る
高低差を付け2体の距離を大胆にあけ、メリハリで魅せた。両者の掌がそのまま山車の両端にあり、心地よい。頭は丁寧に塗られて歌舞伎の品と華を前面に出しつつ、勇み・目配りにこの組の武者ものの持ち味・上手さが滲んだ。
見返しは端正な獅子頭でスラリと。着物の色がもう少し控えめだと尚映えるが、背景から考えるとこれも妥当か。
突如あらわる 大猪(おおじし)つかみ 姫を守りて 羽交い絞め
(見返し) 流す鳥追い 町屋に響き 映える唐桟(とうざん) 江戸の花
江戸後期、滝沢馬琴と葛飾北斎が組んで読本『椿説弓張月』を大ヒットさせたが、内容は為朝の武勇譚であり、今回は肥後の木内山・雪中で大猪を仕留め狩人を驚嘆させる一景を盛岡山車として初めて採用。
昼間の見物ではダントツに映えた。場面読みの音頭歌詞が多くだいたいの筋書きは分かったが、初登場の題だからもう少し説明は欲しい(同構図であれば、忠臣蔵山崎街道の勘平とした方が知名度的には良かったか)。雪は足元に少しだけ表現されていたが、背景や人物の肩などにもっと派手に散らすと面白い。
見返しは園井恵子でありつつきちんと鳥追で、立派。
同組としては借り上げ時期に車輪を差し上げる定型・自作後は当時の衣装を使いつつ一戸や石鳥谷の作例をもとに荷車ごと上げる形を採用している。今回は後者を、衣装を改め体勢も大きく見直して再作した。力んだ手足を歌舞伎の隈取で表現したのは、盛岡の組のアイディアから。
昼間は荷車が庇(ひさし)になって顔が陰(かげ)り、着物の色も深く見えすぎて映えなかった。映え始めたのは薄暮の頃で、きちんと照らされると人形の勇み・考え込まれた体勢作りがよくわかる。相撲髷でなくとも、これはこれで良い。
見返しに日輪を入れなかったのは斬新。
写真・文責:山屋賢一(やまや けんいち)/連絡先:sutekinaomaturi@outlook.com
岩手県岩手郡岩手町川口 令和元年9月21(土)
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