盛岡山車の演題【風流 連獅子】
 

連獅子

 



先代の山車記念館連獅子 紫波町日詰橋本組平成6年

 獅子は千尋の谷(せんじんのたに)に我が子を突き落とし、這い上がってきた強い子だけを育てるという。獅子には文殊菩薩(もんじゅぼさつ:知恵をつかさどる仏様)を守るという生まれながらの使命があるので、この世の何者よりも強くなければならない。親獅子は、獅子に生まれたわが身の悲しい宿命を嘆きながら、我が子を谷の底へと突き落とす。そうして、無事に帰還することを一心に願う。願いが通じて成長した獅子の子が谷の縁に現れると、親子は手を取り合ってこの世の万に勝る歓喜の舞を繰り広げるのだ。

岩手町沼宮内愛宕組平成15年


 獅子の姿は一方は白い髪、もう一方は赤い髪を振り立てた、金襴緞子(きんらん どんす)の和装である。室町時代に完成した能楽の獅子の姿が歌舞伎の『連獅子(れんじし)』に学ばれ、紅白の牡丹に松羽目を背負う華やかな舞台として完成した。舞台の見せ場は、両者が紅白の鬣(たてがみ)を全身を使って振るう「髪洗い」である。暫など筋隈を取る荒事と並んで、鬣を振る獅子の姿は日本人が抱く典型的な歌舞伎のイメージとなっている。盛岡山車の歌舞伎演題でも、髪を振りたてた獅子の人形はすっかり定番となった。

 髪の白い親獅子は大柄で体勢高く、赤い髪の子獅子は小柄で体勢低く、双方に温度差を設けて作る作品もあれば、両者同じ比重で作る作品もある。着物の袖を広げるように掴んだ手、左右にふわりと垂れた鬣を構える手、足元には石橋を踏み据えて滝を背にした作品もあった。衣装の色彩も白に青・金、赤に緑・橙と巧みに組み合わされ、山車の全景はため息が出るほどに美しい。

16年連獅子構図の原型(盛岡厨川や組平成3年)

 盛岡山車の演題の中で、連獅子は鏡獅子と並んで獅子ものの定番だが、同時に標準以上のスキルが求められる難しい演題といわれている。盛岡山車記念館に永らく保管されていた昭和53年盛岡観光協会の連獅子(写真2つめ)は南部の山車職人の憧れであり、これに挑戦して各組が最高の技術を蓄えて連獅子を作った。昭和50年代以降は、盛岡では厨川のや組、岩手町では愛宕組、一戸町では西法寺組が取り組み、石鳥谷町では上若連・上和町組・西組…と過半の山車組が一度は連獅子を製作している。
 平成16年に盛岡観光協会が再度連獅子を製作して、各方面から大絶賛を浴びた。昭和の連獅子は石橋を踏み据え背景は岩と滝、平成の連獅子は橋は無く背景は松羽目であった。周辺域の作品には、両者を組み合わせたさまざまな趣向が見られる。

 

(ページ内公開)

盛岡南大通二丁目 葛巻下町組(盛岡借上) 沼宮内新町組  石鳥谷西組  歴史文化館  川口下町山道組

本項掲載:日詰橋本組平成6年(盛岡山車資料展示山車借り上げ)・岩手町沼宮内愛宕組平成15年・盛岡市厨川や組平成3年・二戸市堀野東組平成16年(一戸西法寺組借り上げ)・青森県黒石市のねぷた(購入写真)・青森県野辺地町(物産センター展示)




二戸市堀野東組平成16年


青森県黒石市(購入写真)

(他地域の「連獅子」)
 歌舞伎の舞台を割りと忠実に写しているものには、盛岡山車の他に角館の飾山(秋田県)・青森のねぶたがある。但し後者は、牡丹を手にしていたりあえて左右対称を崩したりいろいろ工夫が入る。扇ねぶたに連獅子が描かれたこともあるが(写真)、異様な迫力と華やかさに圧倒された。
 この他の人形山車では、蝶や唐獅子などを組み合わせてより幻想的に連獅子を演出している。花巻まつりで東町が出す、大きな唐獅子に乗った連獅子はそうしたタイプの秀作のひとつだ。そういった山車であっても、紅白の美しい毛並みをたたえた和装の二人形は十分な存在感を放っている。



文責・写真:山屋 賢一




山屋賢一 保管資料一覧
提供できる写真 閲覧できる写真 絵紙
連獅子 盛岡南大通二丁目・日詰橋本組(本項1枚目)
石鳥谷西組
石鳥谷上和町組
沼宮内愛宕組(本項2枚目)
一戸西法寺組・二戸堀野東組(本項6枚目)
盛岡観光協会
沼宮内新町組
盛岡や組(本項3枚目)

盛岡か組
石鳥谷上若連
盛岡観光協会@(富沢)
盛岡劇場振興会
大銀座祭り絵紙
御堂筋パレード絵紙
一戸西法寺組
盛岡観光協会A
沼宮内新町組

盛岡青物市場
盛岡か組(富沢)
ご希望の方は sutekinaomaturi@hotmail.co.jpへ

(音頭)


音に聞こえし 清涼山(せいりょうざん)に 架けし石橋(しゃっきょう) 踊る獅子
見るも艶やか 牡丹
(ぼたん)の園(その)に 踊り狂いし 獅子の精
花の王なる 牡丹を背にし 心技変化
へんげ)の 親子獅子
花は牡丹か 蝶舞う園に 競う紅白 獅子頭
八幡祭りに 連獅子引けば 牡丹の園に 蝶遊ぶ
強く育てと 心を鬼に 谷に蹴落とす 親子獅子
谷這い登る 子を愛で
(めで)育て 牡丹の園に 踊る獅子
あらし恐れぬ 親獅子小獅子 浮かれ胡蝶の 影を追い
日ノ本名題の 舞踊の中に 髪をあらうや 獅子頭
二代目団十郎 初演の舞を 踊り継がれし 連れの獅子
見るも勇まし 親獅子小獅子 打てや囃せや 牡丹芳
(ぼたんぼう)


青森県野辺地町 物産館展示品


※南部流風流山車(盛岡山車)行事全事例へ

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