宮城県栗原市岩ヶ崎 「くりこま山車まつり」(7月最終週末)

宮城県栗原市 くりこま山車祭り

 

一区協和会『池田屋騒動』宵祭りにて

平成16年 宵祭りを見物

 栗駒町の山車は、もとは新庄の人々が出向いて作っていたそうですが、いつごろから新庄と関わるようになったかははっきりしません。もともと独自の山車文化があったところに、何らかのきっかけで新庄の作風への切り替わりが起こり、現在の形となった、とも解釈できるのではないでしょうか。

 現在は新庄の職人の手を離れ、形式は酷似するものの栗駒らしい山車が作られるようになりました。

 7月下旬の山車まつりには、メインストリートに十数台の山車を納めた小屋がずらりと並びます。まるで近世の見世物小屋を歩くようです。宵まつり(一日目)の午前中に、それまでは町内で作られていた山車がいっせいにメインストリートに集まり、おさめられるのだそうです。この段階からさらに手を入れて山車を仕上げる団体が多く、宵祭りでもギリギリそういった仕上げの様子を見ることが出来ます。

 宵祭りに動く山車は限られています。すべての山車が動くわけではありません。山車が仕上がると小屋の前には長机が置かれ、顔役らが並んで腰掛けます。机の上には山車の謂れを書いた簡単なチラシが置かれていて、観客が山車への祝儀と長机に熨斗や酒を持っていくと、このチラシを祝儀返しとして渡してくれます。このような習慣は、新庄(山形)、浅舞(秋田)、登米(宮城)と栗駒町を取り巻く三県に見られるものなので、何処が模倣元なのかは分かりません。

 山車小屋の列の周囲には出店も出て、観客らはにぎやかに、おのおのの飾りを見物します。

岩ヶ崎高校生徒による『九尾の狐』の山車

 栗駒の山車人形は、大まかには八戸周辺で見られるような菊人形風のものが多く、新庄のような木彫りの頭ではありません。宵まつりの長時間展示にも耐えうるよう、個々の人形が電動で動く仕掛けを、多くの山車で凝らしているのが特徴です。たとえば武将の乗った馬がゆっくり左右に動いたり、虎が舞台の手前に出てきたり入って行ったり、特定の人形が上下に動いたり…というような仕掛けです。八戸のような舞台全体を動かす仕掛けとも、中部地方の伝統的なからくり人形山車とも違います。意外性を強調するために、わざとゆっくり、そしてたまに動かす。ありそうでなかなかない、栗駒独自の工夫です。シャボンを吹くような仕掛けを凝らしたところもあって、ますますもって見世物小屋のような雰囲気が辺りに漂っていました。

 夜には電飾をまとった山車の夜間運行が行われますが、二、三台が代表して動くので、電飾を掛けずに最低限の灯りで山車を留め置いている団体の方が多かったです。宵祭りでは、シャッターチャンスはあくまで日中、ということですね。翌日の本祭りには、日中、全ての山車が動くそうです。

 宵祭りには、会場の中央で囃子の競演会が行われます。宮城広域に見られるような小太鼓と大太鼓のリズミカルな音曲です。大太鼓のたたき手が、小気味よく太鼓の端をたたき、威勢がよいのが魅力。栗駒を仲介として、広渕(宮城県石巻市)や登米の囃子と新庄(山形県)の囃子とはおおむね共通しており、東北南部の風流山車のかつての隆盛振りを感じさせるものがありました。おそらく双方が影響しあえるだけの濃密な山車祭りの帯が、かつては存在したのでしょう。

 囃子のほかに、栗駒山麓起源といわれる南部神楽鳥舞(「みかぐら」)、甚句踊り他、他地域からの招聘芸能も、アトラクションとして祭礼期間中いっぱい公開されます。初めて見に行った年には、照明を凝らした三台の山車に続き、青森県今別町から招かれた大川平荒馬が迫力あるパレード踊りを披露し、観客の喝采を浴びていました。



平成17年 本祭りを見物

当地で盛んな神楽の演目にも通じる『鞍馬やぶり』(田町)

 今年は合併して栗原市の山車祭りになりました。組によって山車の出来はまちまちですが、1区と2区はめちゃくちゃ上手に作っていて、来てよかったなと思いました。

 1区は鎧兜まで精巧に作ったヒヨドリ越えの逆落としで、馬から転げ落ちた雑兵の首の位置がなんともいえずすばらしかった。2区はとにかく配色が美しい船弁慶で、出場した山車のうちもっとも大きい山車でした。

 今年は去年見られなかった町内運行を見ましたが、いかんせんすごく窮屈な印象で、観客もあまりいません。本来はどうだったのか、そもそもどこからたどるべきか、などといろいろと考えてしまいます。太鼓が乗る車を山車の後ろにパイプでつなぎ、たたき手が乗り込んでたたいているのが栗駒独特。同系統の新庄の山車では、歩きながら太鼓をたたきます。

 今回栗駒の山車を見て感じたのは、人形の扱いの丁寧さでした。以前石鳥谷の上和町組さんに資料を見せていただいた折、八戸流の人形は表情が豊かなのが魅力、と伺いましたが、今回栗駒の山車を見てすごく実感がわきました。八戸の山車を見ても、一度もわかなかった実感です。


筆者が実際に見ている作品
平成16年 平成17年
田町町内会 本能寺の変 鞍馬破り
一区協和会 池田屋騒動 鵯越の逆落とし
二区飛翔会(六日町) 京鹿子娘道成寺 船弁慶
三区躍進会(八日町) 加藤清正竜虎退治 鵯越の逆落とし
四区親和会 一寸法師 一休さん
五区東親会 アテルイと田村麻呂 神明様ご誕生の場
六区鶴城会 池田屋騒動 五条の橋
七区鶴親会 かぐや姫 神霊矢口の渡し
上 野 区 九戸政実 宝船
岩ヶ崎高校 九尾の狐 地元伝説による


山車の背面(左が田町、右が二区)
くりこま山車祭り 見物のための概要

行き方
 @JR東北本線「石越(いしこし)駅」→くりはら田園鉄道「栗駒駅」下車
 AJR東北本線「一関駅」または「有壁駅」からバス接続
  ※くりはら田園鉄道は大変情緒のあるレトロな私電です
  ※バス最終便は午後5時30分頃、列車最終便は午後7時頃

日程
〔宵祭り〕
 @山車展示や出店が始まるのは昼過ぎから
 A囃子競演や鶏舞、ステージイベントは夕方(午後4時半ごろ)から
 B宵祭り山車パレードは夜7時から
〔本祭り〕
 @山車出発は午後2時半、午後4時頃中心街に至る

食べ物
 @熊肉や鹿肉の入ったそばや、熊肉・鹿肉の刺身が食べられる店(駅前)
 A天麩羅饅頭(餡ドーナツ)が名物
 B駅前にソフトクリームやクレープを売る駄菓子屋がある


※街の雰囲気(特に駅前)がたいへん良いところです




※所在地としては仙台祭りエリアのお祭りです

※山車の構成としては新庄祭りエリアのお祭りです

 

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