岩手県九戸村 九戸まつり
話題1
九戸まつりを初めて訪れた平成13年、下記のような日程を記録することができた。
8/17
pm3:30
山車3台伊保内病院集結・郷土芸能熊野神社出発
pm4:00
山車・郷土芸能町内巡行(神輿渡御)
・二ツ家虎舞
・太神楽
・川向駒踊
・荒谷獅子踊
・九戸神楽
・小倉七つ物舞
・遠志内剣舞
・上町山車(途中山車を止めて音頭上げ)
・下町山車(運行中に民謡調の音頭)
・南田山車(運行中に民謡調の音頭)
pm5:00
郷土芸能6団体、八幡宮境内にて演舞(一団体1〜2分)
山車、町内巡行
pm5:30
山車小屋入り
8/18 夜は九戸音頭の流し踊り
8/19
pm3:30
山車3台・郷土芸能八幡宮下集結
pm4:00
八幡宮から熊野神社へ向けて神輿還御、山車・芸能巡行
pm5:00
熊野神社にて芸能披露
話題2
先日、九戸村の村祭りを見物して思ったこと。
村役場やら観光課やらに事前に問い合わせたところ、
「戸田地区でやる3年に1回のお祭りですが、中日の17日には何かやるんですか?」
「なんにもやりません」
「郷土芸能は?」
「なんにもやりません」
…17日は伊保内で平三山車が動くしなあ。せっかく車を出してくれる人もいるし、戸田とあわせて見られたら都合がよかったんだけど。まあ、仕方がない。戸田は翌日に見に行こう。
17日、裏道を散々巡って、葛巻から九戸に向かう道。倉野とか、平内とか、戸田のお祭りに芸能を出す地名がバス停にちらほら、でも全然お祭りの気配がない。
「すいません、この辺のお祭りってどこでやってるんですか?」
「ああ、もう少し先に行ったらへんでチョコチョコと飾り物をしているとこがあったでしょう。あそこらへんで踊りを踊ってる、あれがうちの祭りなんです。踊り組はみんなあっちのほうで踊ってる。他の人が見ると、あれが祭りか!?なんていうんだけれど、あれがうちの祭りなんですよ。」
すごく自虐的なコメントをされる。少し車を走らせると、確かに神明社に幟、そして、なんと瀬月内神楽が門付けをやっているではないか!慌てて車から飛び出すと、なにやら権現さんがいる家の奥のほうで、違うお囃子が聞こえる。
「七つ物だ!」
また駆ける。2軒分の踊りを見て、また車へ。今度は思いっきりテープ音源で南部手踊りらしきものをやっている。スルーしようとした矢先、変なものが3つ家の脇にいるのに気づく。
「ああこれが、かの平内狐けん(稲荷天狗狐剣)であるか。」
…とまあこんな感じで、伊保内にいくならもう少し時間を置いても、とギリギリに二戸を出てきたことが災いし、次から次へと出てくる戸田の芸能門付けを、
「ちょっとだけ、ちょっとだけ」
と見ているうちに、伊保内へは4時半過ぎに着いてしまった。
翌日、今度はバスで九戸へ向かう。伊保内の営業所から戸田方面に出るバスは、伊保内についてから20分くらい待ったあと、出るという。で、今度は18日の伊保内で何かあるかどうかと聞く。
「夜の6時から…。」
「昼間は?」
「何もありません」
「郷土芸能は?」
「何もありません」
実際に行ってみて驚いた。お通りにつくすべての芸能が伊保内の町に出て、1軒1軒の軒先で踊っている。だから、伊保内の町は芸能と芸能と芸能と芸能と芸能と芸能の、多重な音楽に満ち満ちている。ことに獅子踊りと七つ物では、門付けにつき物の「花舞」を演っている。ほとほと商店街から離れづらくいたが、いいかげんにバスがきたので、飛び乗るように路上に止めた。
戸田では、4時からといっていた行列が雨の影響で3時に前倒しになり、4時開始の情報に合わせてきた私は少々ぶんむくれになった。でも4時半を過ぎたころに、戸田の中心街に芸能が次々と繰り出してきて、やはり一軒一軒門付けをする。後ろ髪を惹かれるようにして、5時にタクシーを呼んで伊保内に帰った。
2秒刻みでメーターの上がるタクシーは、バス料金の8倍となる1610円のメーターで止まり(止める直前でもうひと上がりしやがった)、再び5時半に出るバスを待つまで20分、芸能を見る。
別にこのことで、観光課や役場は何をやっているのだ!!、などと責めるつもりはないのである。むしろこれが、昔ながらのお祭りの姿なのである。踊り組が門付けの日程を観光客に知らせる理屈などどこにあろうか。何時にどこどこで、などと紙に日程を移して見せる理屈がどこにあろうか。お祭りとは、どこからともなく現れ、いつのまにか大騒ぎをはじめ、これがいつ尽きるかは知らない、いつのまにかどこかへ去っていく。伊保内で、戸田で、私は北上みちのく芸能まつりがごとき、限られた区域で多数の芸能がいっせいに演舞する状況を味わったのであるが、これは決して計画性をもったものではなく、虫が春になるといっせいに動き出すような、実に自然味あふれるものなのであった。
せかせかとバスや列車の日程を気にしながらお祭りを見に行っていた私が、ついぞ忘れてしまっていた、本来のお祭りの楽しみ方を、九戸村を訪れることでかりそめなりとも、思い出せた気がする。(平成16年見物時)

九戸村の「九戸まつり」は、一般的には伊保内のお祭りをさすが、3年に1回だけ、戸田と伊保内両方のお祭りをさして「九戸まつり」という。相互はまったく別々に開催されるが、開催日は一日ずれるだけで両地区ほぼ同時期である。戸田のお祭りには山車は出ない。伊保内より1日早く行われ、1日早く終わる。
毎年行われる伊保内(いぼない)のお祭りは、平三山車100パーセントのお祭りである。二戸や軽米では平三山車に一戸借り上げ・八戸借り上げ・三戸借り上げ・自作山車などが混じるが、九戸まつりでは、山車は全部平下さんが作っている。
平三山車が当該年度に始めて登場するのは、ゴールデンウィークの「やくしっこ(二戸市米沢薬師堂のお祭り)」であるが、夏から秋にかけて県北地方各地をめぐる「その年のデザイン」と呼べるような作品は、やはり伊保内で「初登場」するといえる。伊保内で出たものが、数週間ごとに二戸や野田、堀野、軽米などで出る。
伊保内の山車は丈が低ので、一つ一つの人形をじっくり吟味できるという利点がある。鎧兜の類もキラキラと真新しい。一番人形の使い方が丁寧、と私は感じた。全て太鼓類を台車の前に集中させている山車だが、それでも人形が見やすい。
山車はいずれも照明を伴わないので、昼間だけの運行となる。上町は囃子の乗る部分に雪洞をつけているが、これも夕方のお通りの際に燈して華やかさを増すだけで、照明としては機能していない。このような部分照明(かざり照明)の例は、かつて岩手県北青森県南で広く見られたものであり、今でも三戸などでこのスタイルが散見される。

九戸、久慈地方の慣例で、伊保内でもお祭り中日の山車の運行は無い。郷土芸能のように門付けを行っている形跡もなかった。メインストリート沿いの公園のようなところに立ててある下町の山車小屋は、中日に訪れたときはひっそりとしていた。
伊保内にしても戸田にしても、お祭りに参加する郷土芸能の数、種類の多さに驚かされる。お通りの終着点にあたる神社の境内では、江刺家手の神楽、南部虎舞、紙ザイ鹿踊り、ケンバイ、七つ踊り、太神楽…といった県北部の主要な芸能が一堂に会し、広く浅くその概要を見せてくれる。これらがその後無規則に町に繰り出し、商店や民家の軒先で次々と芸を披露していく。この門付けばかりは観光案内にも見つけられない、現地に行ったもののみが楽しめるお祭りの見所である。(平成13・16年見物)
(外部リンク)
★九戸まつり山車「巴御前」