八坂神社稲荷神社例大祭一戸まつり2019
蒲生氏郷に仕え出雲阿国の恋人としても知られる戦国武者、九戸政実討伐のため出征した陸奥の戦場で一番首を上げる姿の山車である。見返しは男装の出雲阿国、若侍に扮したかぶき踊り。
盛岡山車の代表的な歌舞伎題材、盛岡型の大太刀を諸手で構える姿。西法寺組としては自作間もない平成4年に製作(3作目)、その後は軽米や堀野に同じ構図を作っている。 二刀流の新田義貞は藤島合戦で戦死する場面と今まで考えてきたが、本作では湊川の戦いで足利の大軍相手に奮闘する姿とし「激闘湊川」を冠している。ただし足元の稲穂は義貞が泥田に踏み入れ足をとられ…との藤島の逸話を活かした形。二刀がそれぞれ何なのか、今回の解説で勉強できた。
※同題の先行作(盛岡市中野)
新元号元年に際し恵比寿や大黒のように、菅原道真を歴史人物でなく神様として度外れの大人形で飾ったようにも思える。あるいは、天皇そのものの山車なのかもしれない。
槍仕(やりし)槍仕は 数々あれど 那古野山三(なごや さんざ)は 一の槍
一番槍の 武功を立てて 那古野山三の 名を残す
二人形の接近具合が素晴らしく、主役がやや高いところから攻めているのも効果的である。色使いが渋いのも良い。一番首の功名を強調するなら、むしろ兜はやられ役に着けたいか。
阿国は前回の念仏踊りよりはるかに阿国らしく、片足を前に出すなど粋に仕上がった。背景が芝居を思わせる幕であればさらに良い。
七尺あまりの 大太刀佩いて 素襖の袖に 三枡紋
伝え残せし 名技(めいぎ)のすがた 秋の祭りの 語り草
三枡の大袖をダイナミックに表現するため、あえて中心線をずらして人形を付け、しかもそう感じさせない。片方は横・もう片方は、実は手前に拡張している。人形自体も重厚で迫力があり、力紙も大きい。い組を除けば歴代の同構図作例中かなり上位に入るが、もちろん面白味には欠ける。
見返しの目新しい色彩が、多少その点をカバーしているが…。
世にも名高き 源氏の新田 太刀を捨つるも 君の為
足利源氏 おさえて並ぶ 新田義貞 上げる旗
躍動的な構図をかなり忠実に再現し色彩も豊かだが、遠望時に小さく・貧弱に見えるのが惜しい。背景が青空なのが、かえって空間を意識させるのかもしれない(見返しはこの青が活き、ここちよい色味)。刀は横に回さず正面に伸ばしたいところだが…。
天下無双の 後藤の槍で 挑むや馬上 声高く
夏の陣幕 道明寺畷 先手(せんて)の又兵衛 花と散る
盛岡で平成27年に初登場した戦国武者の題で、黒田官兵衛の「八虎」に上がり関ケ原合戦で武功を上げ、大坂城を守って夏の陣で討ち死にした。本作は盛岡とは逆向きに槍を使い、陣幕を飛び越えて進撃する派手な構想にしている。花咲か爺さんに殿様が付くのは、戦後間もないころの古写真スタイルの再現。
槍を抱えた武者が槍先でなく真正面を向いて馬上に在るのは強そうでもあるが、ちぐはぐでもある。兜を横に置いたのはこの組特有のセンスだが、人物描写として弱くなった。見返しが手の上がり具合・桜の咲き具合など非常に考えてあったのに対し、表は詰めるべき部分を残して仕上がった感じ。
自前の絵紙は、粗いが大迫力だ。
我を忘るな 都の人よ 天翔(あまか)け道真 舞い戻る
(見返し)主の想いを 我より他に 晴らして紅(くれなゐ) 梅の念
手には梅の枝、足元には黒雲、肩先では雷神が稲妻を落としているが、道真自身の面持ち・体勢は穏やかであった。見返しには、本来の風流趣向規模で「菅原伝授手習鑑」の一景。彼も、また対峙する松王丸も、道真左遷で人生を狂わせられる一人である。
趣向・大きさとも、不自然さを否めない。見返しがそれを埋めてはくれるが、今度は見返しロスを埋めるものが無い。
もっとも、一番攻めた題ではあるし、面白い試みではあった。見返しは歌舞伎人形として非常に端正、表は大人形ながらきちんと「橋中の顔」をしているのが良い。「雷に電飾はかからないのか」と、一戸でも日詰でも葛巻でも思った。
写真・文責:山屋賢一(やまや けんいち)/連絡先:sutekinaomaturi@outlook.com
岩手県二戸郡一戸町 令和元年8月24日(土)
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