令和六年石鳥谷熊野神社祭典山車
※平成21年石鳥谷まつり(同組同題の前作)
※題材について(西組前作掲載)
義貞その手の 二刀に風が 賊に向かいて 乱れ散る
赤きこころは 新田の櫻 愛馬もろとも 藤島に
(所 感)
いや、凄い山車が出たなと、ただただ感嘆した。コロナ前の碇や八艘飛び・清正や弓流しで試みられた”錦絵の躍動美の立体化”がさらに精度を高め実践され、武者ものの楽しさ・カッコよさがすべて詰まっている。それは見る程に、様々なキョリ・角度から湧き出してきた。見返しの創意も素晴らしく、顔を出した小柄で可愛らしい感じが上手く出ている。
「二つ刀」「愛馬の盾」「名を惜しむ」…歌い方がうますぎて音頭を聞き逃してしまった…。解説を見ると一戸に続いて舞台を藤島でなく湊川としているようだが…、いいや、話者の好みで藤島的な歌詞を付けて載せてしまおう。
朝日輝く 熊野の祭り 商売繁盛の 守り神
磁石抱えた 間者を捕らえ 魅せる弾正 伊達男
(所 感)
中組がこの題を出したのは4度、2体ものにしたのは初めてである。盛岡山車伝承域を広く見ても初めての試みと思う。見返しは2作目以降、この芝居に出る『錦の前』というお姫様を飾ってきたが、今回は物語の主題である”髪の逆立つ姫”のようすをコミカルに・克明に描いた。
毛抜という芝居の面白い部分をきちんと形にした点で、同組・他組の先行作例の一歩先を行く作と思う。指さしてモノガタれる稀有な歌舞伎山車である。潰し(磁石持ち)の絞り方があの形しかなかったか、とは思った。
雪の逢坂 みやまの関に 咲いて萬朶の 恋櫻
(見返し)吹けば五色の シャボンの玉よ 粋な玉屋の 玉尽くし
(所 感)
ともに採られなくなって久しい昔の盛岡山車の題である。
人形は3つとも新調と思われ、特にも女の大人形は今後重宝しそうだ。音頭歌詞のバリエーションは例年の数倍で、見返し『玉屋』に因んで松の上からたくさんシャボン玉を流すなど、3日間表裏の趣向を楽しみ尽くした感がある。
前作は黒主の立ち姿のみだったので、立岩そのまま桜の幹という設定に納得感があったが、2体となるとやはり寂しく、桜が多いのではなく飾り自体が少ない感じに見えた(1体でないから、視線の向き方が変わるのだと思う)。絵紙の黒主の目線や鉞の向き・桜の精の台上げなど歌舞伎準拠としたほうがまとまったと思われ、白塗りと言えど黒主の顔の彫りはもっともっと深いほうが良い。見返しは背景も衣装も凝り楽しく仕上がったものの、やはり顔に味わいが欲しい気はする。
あるじ守りし 安宅の関で 忠義誉れの 武蔵坊
智慧の弁慶 富樫が情け 安宅を越えて 奥のみち
(所 感)
勧進帳特有の色味は今作でも心地良く、端正な富樫の衣装がこの組の底力を存分に見せた。弁慶と静御前には、歌舞伎に加え能の馨りも。牡丹の垣根から大胆に飛び出した飛沫も見栄えがして好きだ。
懸案は、この場面がどんな場面で、それをどこまで見る側に示せたかだ。弁慶の着物の柄とか、富樫が何をして弁慶がどう受けているのか、等についてである。見返しの旅姿も然りで、それらを観衆がちゃんと受け止め得る仕掛けがもっと必要と思った。
私自身は、表を芝居絵の立体化をはかった趣向と見做していて、芝居絵に於いてこの場面は富樫・弁慶の決別の姿である。ならば富樫の顔はもっと穏やかに、体勢も優しく、両者の距離はもっと広くあるべきと感じた。
比叡の山々 琵琶湖に映えて 弁慶勝負の 鐘を取る
朝日輝く 熊野の祭り 錦織り出す 西組が
(所 感)
この組の題材音頭を聞いたのは久々か、恐らく初めてのこと。前作より鐘が大きくなり、弁慶の態勢も自然になった。良くなったとは思うが、鉢巻姿の定型に近づける等の変化がもっと欲しい。
静御前は端正で妖しく、品の在る良い見返しと思った。
写真・文責:山屋賢一(やまや けんいち)/連絡先:sutekinaomaturi@outlook.com
岩手県花巻市石鳥谷町好地 令和6年9月8日(日)・同10日(火)
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