熊野神社例大祭石鳥谷まつり2019


 周年の年で、各組気合を入れて題材を選んだ結果、当地らしからぬ動物ものが頻出。



 



鷲の児雷也 / 蝦蟇仙人  下 組

印を結んで呪文を唱え 鷲の児雷也そらを舞う

豪傑児雷也 義賊の頭 無双の大鷲 舞い上げる  
(見返し)仙素道人 秘伝を授け 名乗る児雷也 蝦蟇の術

※南部流風流山車の『児雷也』

 
岩手県花巻市石鳥谷町熊野神社祭典仙素道人秘伝を授け 名乗る児雷也蝦蟇の術

 今回の当山車の解説文は、盛岡山車「児雷也」に関わる全てを因果を含めて網羅した素晴らしいものであった。
 大蛇丸に谷底へ落された児雷也と綱手は、仙素道人からそれぞれ蝦蟇と蛞蝓の術を授かり、大蛇に挑む。蝦蟇になった児雷也が大蛇丸の銃弾を背に受け絶体絶命のその時、当山車の如き鷲乗りの姿を現し颯爽と飛び去るのだという。

 端正な鷲の顔が圧巻で、鳥を作った山車人形では抜群の秀作である。羽根は横に広げず前に伸ばし、山車が近くに迫るといきなりその威容が現れる。故に、鷲の大きさを軽減することなく名物の大人形が使えているのだ。人物の動作(構え方)と鷲が視界に広がっていく感じが合っていて、非常に心地よくワクワクする。





八犬伝庚申山 / 里見の伏姫 上 若 連

すがた現す化け山猫を 形見の刀で仇を討つ

仁義八行(はっこう) 里見のもとに さだめ受けたる 八犬士
本性(すがた)あらわす 化け山猫を 形見の刀で かたき討ち

※南部流風流山車の『里見八犬伝』

 
岩手県花巻市石鳥谷町熊野神社祭典

 「南総里見八犬伝」より、父を殺してすり替わり非道を尽くしてきた化け猫を、犬村大角が犬飼現八の助けで退治する場面。盛岡山車では「新盛組」「み組」のいわば占有題であり、市外では初登場。見返し「伏姫」は八犬士の母ともいうべき存在で、自害の末に八珠を飛ばしていることから、山車人形は青め・暗めの化粧をした。

 人物の顔や体勢に品があり、構図全体が大きく作られているのが魅力的である。全身作りの猫は大きくて立派だが、目の大きさの違いが和風を削いでいるのと、前足がぎこちないのが惜しい。
 伏姫は盛岡山車初採用・八犬伝の対応見返しとして長らく出るべき案であった。背景に屏風絵風の犬・首飾りの八行の珠など、趣向は実に細かく見どころが多い。





清正猛虎仇討 / 鏡獅子 上和町組

岩手県花巻市石鳥谷町熊野神社祭典

虎の猛攻 巧みにかわし 狙い定めし 仇を討つ
(見返し)新たな時代の 鏡を開き 舞うは蝶々 獅子の精

※南部流風流山車の『加藤清正』

※南部流風流山車の『鏡獅子』

※当組同趣向の前作

 
 
岩手県花巻市石鳥谷町熊野神社祭典岩手県花巻市石鳥谷町熊野神社祭典

 猛虎・猛将の対峙の奇観。伝統構図をやぶって虎を組み伏せ喉元を狙う清正の背中を見せ、陣羽織の題目(南無妙法蓮華経)を見せた。槍の柄は着脱式で、広い場所では大きく上に突き出る。見返しでは鏡獅子の正月の場面に祝意を加え、新元号元年を祝った。

 難しく面白い構図の再現度は限りなく100%に近い。左右で大きく見栄えが変わり、しかもどちらの見栄えも良い。虎の顔と前足の配置が伸びしろか。定型の虎退治がもっと前に出ていたら、あるいは組で初めて取り組む題材であったなら、もっともっと魅了されたと感じる。
 見返しに鶴亀や桝を足したのは賑賑しい反面、田舎びてもいる。





真田幸村 / 幸村の妻  中 組

とくと味わえ真田の戦 ひのもと一のつわものよ

燃えよ幸村 不屈の槍で 新たな時代を 切り拓け
(見返し)憂き目に遭えど望みは捨てず 寄り添い繋ぐ真田紐

※南部流風流山車の『真田幸村』

岩手県花巻市石鳥谷町熊野神社祭典

石鳥谷まつり思い出展(令和3年10月)にて

 赤備えの軍装に鹿角の兜、六連銭の旗印で家康の本陣に迫る「日の本一のつわもの」真田幸村馬上の雄姿。見返しの竹林院は義将大谷刑部の娘で、幸村の妻。

 兜の角が長く構図の上まで及んでいるあたりはさすがだが、安定し豪華である分、迫力・悲壮感には欠ける。いつも立派に見える演題看板が、今回ばかりは槍を遮って勿体無かった。また、音頭の作り方が今年に関しては独特で、違和感がある。
 見返しの作りこみ策はなかなか難しいが、例えば覆面姿の老将が傍らに居るなどすると良いか。

【右の写真】
 令和3年、新型コロナウィルス感染拡大に伴い2年連続で中止となった本祭典の山車製作・運行の代替として、町内「小さな百貨店ぷらっと」にて約1カ月間公開された中組の山車人形。展示場所の高さに合わせて槍遣いの立ち姿に組み替えられ、鎧や着物・大道具小道具に祭典時以上に間近に迫れる機会となった。特に本作については、身近な素材に細やかな工夫を加えて真に迫る鮮やかな装束に仕上げていることがよく伺われた。
 本作は武者、上若連は表用の歌舞伎人形、上和町組は見返し・女もの…と参加3組で山車人形の主たるバリエーションが網羅され、ほぼ同じ大きさの頭でも組によっては天井近くまで背丈が及んだり大きな兜を伴ったまま飾られたりし、当地の山車人形表現の豊かさが浮き彫りとなった。さらに松・桜など飾り物の一部を添えた演出は、人形展示にとどまらない風流山車の風情を醸した。






巌流島の決闘 / りんご娘  西 組

岩手県花巻市石鳥谷町熊野神社祭典



※南部流風流山車の『巌流島』

 

 石鳥谷では昭和50年代以来久々の登場となる楽しい題材。
 飛び上がる体の形を作るのはなかなかに難しいようだが、双方わかりやすい衣装で再現された。






※各組歴代作例




写真・文責:山屋賢一(やまや けんいち)/連絡先:sutekinaomaturi@outlook.com

岩手県花巻市石鳥谷町好地 令和元9月8日(月)・同10日(水)

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