岩手県北上市 二子の火防祭

 

 

 花巻まつりの魅力といえば、独特の優美な旋律の「花巻ばやし」を挙げる方も多いでしょう。花巻ばやしには実は師匠があり、もともと二子(ふたご)町3町内が火防祭で使っていた「吉原囃子(よしわら ばやし)」を学んだものなのだそうです。花巻まつりのほかに北上市内の山車祭り(黒沢尻、江釣子)でも吉原囃子が使われており、江刺甚句祭りでも町内屋台が演奏しています。二子の山車行事はこのように、周辺地域に大きな影響を与えました。
 もともと旧暦の2月8日とその翌日に開催されていたものですが、近年は春分の日に合わせる形で、といってもぴったり23日ではありませんが、周辺の土日2日間を選んで開催されています。

 二子町から出る山車は3台で、上宿の万代講、和小路の代々講、下宿の秋葉講です。団体名に「講」の一字を取るのが独特で、当地で盛んな神仏習合の修験道と深く関わっています。荷台の付いたトラックに装飾を施した山車で、綱を付けて引き子が付くわけではなく、運転手が一人で動かすものです。引き子に当たる人たちはというと、紙で作った花笠をかぶり、山車の前後左右に控えています。山車の前面は張子で作った秋葉山と鳥居を中心に据え、松、桜、牡丹などを飾ります。人形は背面のみに飾り、題目は「風流〜の躰」と付く花巻・北上と共通の作法です。太鼓が人形飾りの下に付いていて、たたき手は歩きながら叩きます。
 以下には団体ごとの特色をまとめてみました。



各山車組の詳細記述(平成17年取材時)

万代講「五條大橋」
 「牛若を待つ弁慶」として登場。ともに衣料用のマネキンを使用し、手のかたちは3団体中最も美しく仕上がっている。桜は玉桜と枝垂れ桜を併用しているが、枝垂れ桜は独特の製法で作った層の薄いもので、花と花をつなぐ部分も紙である。山車の前面に小太鼓を乗せた台車を着け(花巻と同じようなもの)、稚児が叩く。

代々講「五條大橋」
 トラックを大きな木枠で囲み、山車を大きく見せている。ペンキで波を描いたブルーシートを側面に吊り下げ、紙花は玉桜ではなく家庭で作るタイプのものだが、彩り鮮やかで、中には椿の紙花もある。枝垂桜のみ和紙で作り、一層の簡単なものだがきれいに飾られていた。人形は弁慶が創作ながらなかなかユニークで、牛若はすっかり観客に背を向けて据えられているマネキン人形。手足は軍手軍足に綿を入れたものを彩色してつくっている。

秋葉講「弁慶立往生」
 三団体中最も素朴で簡素な山車。人形の仕上がりも手作り風で、トラック部分も露出している。松に下がる藤はなく、桜は玉桜の立ち木のみ使用。小太鼓は後ろについている囃し方が片手に持ち、もう一方の手で叩く。



山車の行列

 囃子は、残念ながらカセットテープを使っています。個別に運行する時はおのおのがテープを流しますが、祭典の一番の見所である神輿お渡りに随行する際は一団体のみテープを流し、全部の山車がそれに合わせて太鼓を叩きます。小太鼓、大太鼓、三味線で演奏します。山車が休憩に入ると、やはりテープ音源で花笠をかぶった踊り子が手踊りを披露します。現代風のものもあるようですが、趣を感じられるものもあるようです。

 祭礼は2日間行われますが、このうち山車が動くのは初日のみで、夕方までで運行を終えてしまいます。朝の10時半から行われる神輿パレードに合わせて、午後9時半頃から各団体が運行を開始します。同時に岩手県の無形文化財、上宿・下宿の大乗神楽がちゃんちゃんこのような趣のある絣の衣装を身に付けて寒さをしのぎつつ、二子部落の全戸を2日間かけて火防御祈祷(獅子舞を踊って屋根に向けて水をかける)に回ります。九字を切る細やかな手の動きがとても美しいです。

 

 

(公共交通機関によるアクセス法)
 JR東北本線村崎野駅から徒歩35分、タクシーで片道900円程度。




文責・写真:山屋 賢一

※岩手県南から宮城県北にかけての風流山車行事集成

 

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