青森県南のさまざまな風流山車行事

 

三戸町(青森県) 

 

 岩手県北から青森県南にかけての山車行事のうち、最古といわれる一つ。もとは9月13日から3日間だが現在は9月最終週末に行われ、初日と最終日に山車が6台出る。
 青森では唯一、岩手と同じく「風流」「見返し」を題に冠する風流山車である。古くから山車の上部に後ろに折れる「どんでん返し」が付き、周辺の山車にも伝播している。飾りの定型は生木の松(二枝程度)と藤・桜・椛・牡丹・菖蒲の造花で、造花は紙製もビニールの既製品もある。飾り側面のいちばん下は屋根で、色とりどりの軒花が付く。囃子は神社に向かう際・神輿行列に随行する際は三味線の入る優雅なもの、自町内に帰る際は八戸や盛岡のようなテンポのよいものを使い分け、後者は団体によって個性がある。小太鼓は複数だが大太鼓(中太鼓)は一人で、太鼓の向き・叩き手の向きは山車によって違う。音頭は岩手県北二戸地方に近い沖上げの節で、綱元付近で幣束を持つ2人が上げる。掛け声もこの2人が、行きは「ヨーイスヨイサア」・帰りの囃子には「わーっしょーい」とかける。最終日は、自町内に入った山車が通過する他の山車を待って囃子共演する恒例がある。
 二戸(岩手県)の平三人形が入った時期もあるが現在はすべて町内手作りの山車で、審査制度が始まって以降は作風・スキルが揃った一方、人形の数が増えどんでん返し以外の展開も加わり八戸型に近くなった。
 写真は、現在は出さなくなった下二日町町内会の「将門と滝夜叉姫」の山車。この下二日町のほか2町が、岩手県内に山車の貸し出しを行っている。(平成13・16・23・24・30・令和4・6年見物)

 

※実際に見に行ってみて(旧)
※実際に見に行ってみて(新)

 

 

南部町の山車 (旧名川+旧南部+旧福地を総括)

剣吉諏訪神社大祭(旧名川町) 最寄駅:IGR剣吉駅

9月8日から10日まで、「南部手踊り」を踊るための舞台を備えた山車5台が運行する。人形が前面の屋根と背面全体を飾り、舞台では踊りに備えて振袖を着た踊り子が襷掛けで太鼓を叩くので、山車全景は非常に派手な色味となる。音曲は優雅な囃子(神輿渡御に従う際)とリズミカルな囃子(自町内に帰る際)の2種類で、後者は八戸の山車囃子とまったく同じである。神社行列以外で他の町内を運行する時は、山車の囃子は太鼓のみにする。夜10時頃まで運行するので、山車には照明が入る。
 写真は荒町の山車「桃太郎苦戦」、踊り子が舞台で手踊りを演じているところ。

(平成14・16年見物)

実際に見に行ってみて

 

 

「南部まつり」(旧南部町) 最寄駅:IGR三戸駅

 8月第4週末開催。山車運行は2日目にあたる日曜日で、午後3時から夜8時ころまで。パレードが三戸駅に到着し山車が折り返す夜7時頃を「山車競演」と称している。

平成16年は駅前牡丹園・小波田・大向町・門前町の4台の人形山車が運行、三戸流「どんでん返し」の仕掛けを伴う大型のものもあり4者4様である。衣料用のマネキンや発泡スチロールを削って造った人形・絵の見返しなどが見られ、夜間照明もつく。囃子は、行きは三味線の入る優雅なもの、帰りは二戸以南のようなテンポの良い囃子を使い分ける。「やっとこせ、よいわな」と合いの手の入る音頭を上げながら運行、音頭による祝儀返礼も山車を止めてしっかり行っている。

写真は門前の山車で「義経一の谷」。この作例以前はアニメキャラクターなどの大人形だった。

 

(南部まつりの歴史)

1970年代までは「南部町駅前町内会」として三戸町の秋祭りに山車を出していたが、しばらく休止し、90年代に入って南部町独自の「南部祭り」が創設された。大名行列と樽神輿の祭りとして始まったが、十和田のような太鼓車に創作太鼓を乗せて運行したこともあった。神輿はあくまで神体を伴わない樽神輿である。平成15年頃から人形山車を2町内会で出すようになり、三戸町から囃子の指導を受けた。

 

(平成16・17年見物)

実際見に行ってみて

  

()

 

野辺地町(青森県)  野辺地八幡宮

 

 北前船で京都から伝わった由緒ゆえの「祇園まつり」だが、「観光夏祭り」「祇園夏祭り」と称した時期もある。開催は盆明けの週末3日間で、初日が駅前発の夜間合同運行・中日午後は海上渡御後の自由運行・最終日は日中の商店街での合同運行がある。
 山車には欄干が2段あり、うち下段で稚児装束の少女が優雅な音曲を奏で、曲目には東北地方太平洋側に広く見られる「けんばやし」も含み、上段には更新制の人形飾りを仕立てる。山車行列の先頭には竿3本で掲げる花馬簾(町印)と神楽車を伴い、この神楽のほうが祇園ばやしより活発で威勢が良い。
 野辺地の山車人形は八戸同様の菊人形風のもので、1台に3体程度乗るが、丁寧で洗練された作り方で周辺と一線を画す。一部の組(祭典部)では「魂入れ」として、御神酒で墨を溶き人形に目を入れるといい、装飾は岩とビニール製の軒花(四方に出る)、これに必要に応じて桜や椛・松の造花が加わる。これら草木は飾りの上部に及ばないため、人形はねぶたのような露天状態となる。背面はねぶた同様の送り絵もあれば、「送り山」と称して人形飾りを作るところもあり、同じ趣向を数年使い続けるところも多い。浜町組では京都や下北半島と共通するという「船山車(ふなやま)」を毎回出し、舳先には観音や恵比寿など神像をいただく。最優秀賞受賞の趣向は以降1年間、駅前の観光物産PRセンターに展示される。
 写真は「水滸伝」の山車で、ねぶたの題としてはよく出てくるが、南部の人形山車の演題には滅多にあがらない趣向である。駅前に山車が集まる初日の夕方に撮影。
(平成14・16・17・18・24・令和6年見物)

 

平成24年写真帖

 




青森県南部地方のこれ以外の山車行事

 

文責・写真:山屋 賢一

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送