主に岩手県内陸中部(たとえば盛岡市など)の秋祭りに出てくる
山車(だし)について紹介しています。
年ごとに飾りを替えるので、どの年も見逃せません。
ここに紹介している山車は、書いている時点での「来年」には
すでに見られなくなっているものばかりです。

こういう山車は岩手に限らずありますが
盛岡地方には当地なりの特色があります。
単純に言うと、
ごく限られた飾り物で、ごく限られた人物数で趣向を作ります。
限ることで生まれる美しさと品格が魅力です。


暫(しばらく)は江戸歌舞伎(かぶき)を代表する演しもので
ご覧の通り、実に華やかでおめでたい出で立ちで舞台に上がります。
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岩手石鳥谷山車

岩手沼宮内山車

盛岡地方では古くから、この暫を題に採って山車を作ってきました。
当年出場の3例はそれぞれに特色・魅力があり、
それは単に異なる場面・体勢をとったというだけにとどまりません。

義経の八艘(はっそう)飛びは武者人形の定番
定番といいながら、なかなか難しい演しものです。
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基本的なポーズや身につけているもの・持ち物ほぼ同じようなのに、
こんなに違って見えます。
それほどこの型の山車は繊細で、
ほんの少しの工夫・気遣いが出来映え全体に影響するのです。

飾り物の形態は様々ですが、特に華やかなのは歌舞伎2体
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騎馬武者
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などでしょうか。



背面の彩りも見逃せません。
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さて、年毎に姿を変えねばならぬ作法上
山車人形の題材に何を採るかが大きな関心事になります。

毎年のように登場するありふれた題材もあり、
これは少なくとも実物を前にするまでは、
あまりわくわくするものではないです。
岩手沼宮内山車

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他で出てから10年経たないような題を出すのは恥だった
…なんて話も、以前どこかで聞いたような。
目新しい題への期待は、山車祭りそのものへの期待と考えて間違いないでしょう。


いちファンとしては、
すごく昔に出たきりの塩漬け題材なんてものに
心が躍って仕方がない。

これは昭和38年以来の登場
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昭和36年以来と、同56年以来
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皆、なかなかの存在感で素晴らしい。
平成28年が暮れ、残るは『曲垣平九郎』『曽我の狩場』『景清のシコロ引き』『大高源吾』『俵星玄蕃』『神武天皇』『桂小五郎』『湯上がり為朝』…
…『清水一角』『唐犬権兵衛』『一心太助』『本多忠朝』…と、こういう題も僅かとなりました。

ふるきをたずね、に限りなく可能性が開いているのは
この土地の先人がそれだけ素晴らしいものを積んできた証です。


今までに無い新たな題材に取り組む、そんな意欲溢れる姿勢にも共感したい。
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これなんかは初採題にしてかなりのセンスの良さ、
だいたいみんな知っていて、採り上げられたことがなくて、派手で変わっていて、素材に語るものがある。

このような成功例に至るには、実に微妙なセンスが必要で、

誰もわからないようなものは、やっぱり出してはダメだと思うのです。

山車は個人の芸術を披露する場ではなく、みんなで少しずつ出し合って出すものだし
神様に供え、みんなで見るものであるから。

生業として山車づくりがなされていた時代は、
その辺りの境界を守る仕組みが自然に出来ていたのかもしれません。
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山車の趣向が見る者に伝わる機会は非常に限定されていて、
まずは実物
それから、題をどう付けるか
そして音頭
この3つで、例えば絵紙に描き表した構想を説明しきるのが本来。
パンフレット等に載る解説は辞書の引用まがいではなくて、
この3つの補足が主目的であるべきです。
(絵番付に趣向の説明が載るようになったのは、そんなに古い話ではない)
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時にそれは、なぜ採ったのか・どんな思いを込めたかに踏み込む必要も出てくるでしょう。
「良い山車」というものは、自ずとそれらを語りだすのかもしれません。


かつて祭りは、地域の・そして観衆の
教養を試す場にもなりえました。それがわりとスタンダードな「楽しみ方」でもありました。
それだけに個人の意思を越えて、様々な意味の「大きさ」で
山車が作られてきたようにも思えます。
それゆえに、「地元自慢の山車」になったのではないでしょうか。

かえって現在の、モノが溢れ娯楽が溢れ情報が溢れるこの環境こそ
このようなセンスを鈍らせてしまうのかもしれない…
もしかすると山車の「一番大切な部分」は、今この時に最も危機に瀕しているのではあるまいか
…取り越し苦労な気もしつつ、いささか不安です。


なんだかんだで、
こういう誰でも知っているものが一番難しく、
一番面白かったりもします。
岩手沼宮内山車


最後に、同じ作法の地域同士の繋がりで生まれた山車をいくつか
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同じ作法を持つ地域の人同士が祭りを見合い、学び合う
新たな潮流が生まれてきました。


来年はどんな山車が出るのでしょうか。
ますますの広がりに期待が高まります。
(文責・写真:山屋賢一)


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